2012/10/10
●赤とんぼ
端から見ると農業は孤独に見えるらしい。特に除草作業の多くなる有機農業はどうしてもそういう印象をもたれてしまう。けれど、やっている本人はそうではない。例えば田んぼをトラクターで耕していると後ろから出てくる昆虫を食べにサギやカラスなどががよってくる。梅雨の頃にはツバメが飛び交い、ときにはぶつかるぐらいスレスレになるぐらい飛び去っていく。ほかにもトンビがピーヒョロロと空に輪を描いたり、雲雀がピーチクさえずり、突然の蛇の出現に蛇が台の苦手な私は悲鳴をあげたりと色んな生き物の活動に触れていて退屈しない。
そしてこの時期には無数の赤とんぼが心をなごませてくれる。畑仕事でもしていると肩の上に止まったりする。こちらも驚かさないようじーっとしている。
赤とんぼとはアカネ属のトンボの総称で、約20種類ほどいる。その代表格がアキアカネ。これは米つくりに適応してきたトンボだ。初夏に田んぼで羽化して、夏を涼しい高原で過ごす。そして秋、産卵をするために田んぼに戻ってくる。この卵は翌年の春、田んぼに水が入るとふ化してヤゴとなる。
ところが、最近は“中干し”といって六月頃に水を落とす作業をする。中干し自体は田んぼを固めて稲を倒れにくくしたり、コンバインでの収穫作業をスムーズにできるようにしたり、あるいは土に酸素をいれたり、重要な作業である。問題は中干しの時期である。六月はオタマジャクシがカエルに変態をしたりミズカマキリやゲンゴロウ、タイコウチなど田んぼの最も賑やかさにあふれる時期。この時期に水を落としてしまうことは彼らにとって致命的なことである。
なばたけ農場では7月中旬に水を落とし彼らの住みやすい環境を作り、田んぼに生き物がいっぱいの米つくりをしている。それで早朝の田んぼには水の中から稲の茎にはい上がったヤゴたちが羽化を始め、それを狙ってツバメたちが飛び交う様子が他の田んぼよりよく見ることができる。