2012/10/ 5
●風呂焚き
十月の声を聞き日も短くなり、朝晩はメッキリ肌寒く感じられるようになった。ついこの間まで暑い暑いと言っていたことが懐かしい。そういえば、いつのまにやら蝉の鳴き声も聞かれなくなり、かわりに響く虫の声が秋の気配をかきたてる。
そして、夏の間はシャワーですませていたのが、この時期になるとお風呂が恋しくなる。我が家の風呂は昔ながらの五右衛門風呂。薪はほぼ屋敷に生えている杉やケヤキその他の庭木などでまかなっている。今日も友人の稲葉さん(プロの樵)に枯れかかった栗など3本の木を切ってもらった。田んぼ仕事も一息ついたこれから合間を見てぼちぼち割木にする。
庭で拾った杉葉や枯れ枝を焚き付けにして火をおこす。庭の掃除もでき一石二鳥。焚き口でジャガイモやサツマ芋を焼けば一石三鳥となる。それからは、仕事や子供の迎えなどの合間に木をくべていく。一時間もすればお風呂がわくが、服を脱いだはいいもののあまりの熱さに水でうめる間、待たねばならぬこともしばしば。
薪風呂の素晴らしさは体の芯から温まること。冬の寒さの厳しい日にはことさら実感できるだろう。窓を開け雪が舞い散る様を見ながら入る風呂は露天風呂みたいで風情があってよい。
ところで、「くべる」という言葉が死語になりかかっているそうだ。オール電化の普及など火のある暮らしに無縁の家庭もある今の時代には「木をくべて。」と頼んでも通じないのはいたしかたない。近頃のアウトドアや薪ストーブのブームはこうしたことの反動だろう。普段は便利な生活を享受していても人間としての本質的な部分を満たすことができず、衝動的に自然と触れたり火のある時間を過ごしたくなる。小屋に閉じ込められている家畜が放牧されるのと同じと言っては言い過ぎか?